後継者不足や収益性の低さから衰退している沖縄のサトウキビ産業と、世界で2番目に環境負荷の大きい産業と言われるファッション産業。
この2つの産業の垣根を超えたサスティナブルな取り組みが、ここ沖縄でスタートしています。
それが「SHIMA DENIM WORKS」。なんとサトウキビの搾りかす「バガス」からデニムを作っているファッションブランドです。
代表の山本直人さんがバガスとの運命の出会いを果たしたのは、沖縄本島に唯一残る製糖工場へ訪れたときのこと。
サトウキビは世界で一番多く生産されている農作物であり、その量は年間18億9000トン。
その搾りかすのバガスは、それだけでも2〜3億トンにも上るのだそう。
家畜飼料やバイオマス燃料にその一部が利用されているものの、有効な活用法が見出されていない未使用資源であることを知りました。
「このバガスを何とかできないものだろうか…」
「何より、サトウキビ畑の広がる沖縄の原風景を残したい。」
そんな想いからSHIMA DENIM WORKSの挑戦が始まったのです。
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■大量生産・大量廃棄
環境負荷の高いアパレル産業
一方のファッション業界でも、ファストファッションの台頭による大量生産・大量廃棄や、生産工程での水や電力、石油化学製品の大量消費、排水による海洋汚染や輸送時のエネルギー消費や排ガスなど、様々な問題が山積みになっていました。
この流れにも歯止めをかけたかった山本さんは、バガスを使った繊維を作り、アパレル産業が抱える課題を少しでも改善しようと試行錯誤します。
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SHIMA DENIMが生まれるまでを楽しく話してくれた代表の山本直人さん
■バガスからデニム
山本さんがまず取り掛かったのは、沖縄の食品加工場で乾燥させたバガスからバガスパウダーを生成すること。
できる限り国内の生産業者と協業することが地域産業の保護にも繋がると考え、出来上がったバガスパウダーを、岐阜県美濃市でマニラ麻と合わせて和紙に加工し、 さらには広島県福山市の撚糸工場で和紙を撚って、生分解性があり環境にやさしいバガス和紙糸を作り出しました。
そして、世界的に信用の高いCOTTON USAというサスティナブルな綿を、洗浄薬剤や温水を使わずにECO染色。
バガス和紙糸を緯糸、COTTON USAを経糸に使いデニム生産日本一の広島県福山市で、デニム生地を織り上げました。
まさに山本さんの執念とも言える情熱と日本の確かな伝統技術が、バガスから繊維そしてデニムを作り上げていったのです。
『何より、デニム自体が丈夫でリペアもできて、エイジングを楽しめるサスティナブルなアイテム。SHIMA DENIM=島デニムは、沖縄という島だけではなく日本という島デニムでもあるんです。』
そう語る山本さんは、どこか誇らしげで素敵な笑みを浮かべていました。
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出来上がったバガスデニムは沖縄にも再上陸し、県内の職人によって様々なハンドメイド製品に姿を変え、広がっています。
■地球にやさしく、廃棄物を生まない循環型ものづくり
~Bagasse UPCYCLE~
その「サスティナブルで、かっこいい」取り組みは、バガスデニムだけにとどまりません。廃棄物をリプロデュースすることで新たな価値を生み出すだけではなく、作りすぎず廃棄物を生まないこともまた、環境へのやさしさのひとつ。
工場から発生する残布もその一部に使いながら作った、沖縄の定番アイテム『かりゆしウェア』を出張者や観光客に貸し出すシェアリングサービスが、無駄に作らず廃棄までの期間を最大限に伸ばす取り組みとして実践されています。
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一人ひとりのサイズと好みに合わせて作るデニムスーツのオーダーメイドも、「大量生産・大量廃棄」 を改善するための生産方法として取り入れられているほか、 廃棄される衣服も焼却ではなく炭化することで、土壌改良剤や燃料として、サトウキビ農家や製糖工場に還元しています。
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地球にやさしく、循環させようというポリシーが細部にまで行き渡り、それを着実にカタチにしているSHIMA DENIM WORKS。
私たちが沖縄で過ごす時間の中にそんな循環型ファッションを取り入れることで、この循環の輪はさらに広がり続けていきます。
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