古来より、先人たちの技術と情熱に支えられ
脈々と受け継がれてきた沖縄の伝統工芸品。
歴史が大切につないできたものを、
この先の未来に手渡すために。
熟練の技を有するベテランから
期待の若手職人まで、
作り手ひとり一人の
“ものづくり” への思いを感じてください。
祖父や父を含め、親戚の多くが壺屋焼の製作に携わっているため、幼い頃から工房の風景が日常生活の一部でした。小学生の頃には見よう見まねで焼きの工程まで体験していましたから、恵まれた環境だったのだと思います。高校卒業後に本格的に工房に入り、父・新垣修の作陶の側で修行をしました。親子とはいえども職人の世界なので、手取り足取り教えてもらうようなことはなく、試行錯誤しながら納得のいくものづくりを追求しているうちに今に至ります。
壺屋焼は、赤土の上に白土で装飾する「上焼(じょうやち)」が主流で、線彫りなどを用いて魚紋や唐草といった柄をつけます。職人同士なら、同じ伝統柄でも一目見たら誰が作ったかわかる程、作品には「その人」が映し出されるもの。また、この世界は40代後半の私でもまだ若手の部類です。常日頃から「職人は50代から本番」と言われており、生涯をかけて取り組むものだという思いがあるため、これからも精進しながら、壺屋焼をつなぐ作り手のひとりになれたら嬉しいです。
「窯変指描壺」は、伝統柄を用いた代表作で、登り窯ならではの釉薬の変化と指で描いたダイナミックな唐草模様が特徴です。また、私は伝統柄をベースに新しいデザインを取り入れており、正方形を傾けたフォルムと魚紋を立体的に再構築した「CUBE魚群カラカラ」はその象徴的な作品です。長い歴史をもつ壺屋焼ですが、時代に合わせた商品作りや伝統技法を活かした新しい意匠など、作り手自身も楽しみながら先人たちの思いと技術を受け継げたらと思います。
主な取り扱い店舗:
新垣陶苑(那覇市)/
しびらんか(南城市)/
土産品店あさと(那覇空港内)等
壺屋焼窯元 新垣陶苑
TEL:098-864-1713
幼い頃に目にした、「うちくい(風呂敷)」の色彩の豊かさや美しいデザインが私と紅型の出会いであり、今へと通じる原点で、染織科で学ぶうちに、紅型を生業にしたいと考えるようになりました。その後奈良県の芸大で4年間染色の技法を学んでいましたが、帰省時には「城間紅型工房」へ日参し、卒業後はここで修行をしたいと直談判したんです。それほど憧れていた工房、城間栄順先生の下で働くことが決まった時は本当に嬉しかったです。
修行時代は紅型の全工程を叩き込まれました。独立して20年以上経った今でも、あの日々は私を支えてくれる揺るがぬ骨格となっており、「先人に恥じないようなものを作りたい」、そんな思いで紅型と向き合うようになりました。現在は製品作りと並行して自身の作品作りや企業とのコラボレーション、現代の生活に馴染む小物類の製作も行っています。例えば「琉球紅型干支お守り」もそのひとつ。干支にまつわる物語を紅型で丁寧に染め上げて表現しています。
2024年、琉球びんがたにおいて日本の伝統工芸士の認定を受けました。その際に製作したのが紅型着物「長寿冨貴」です。古典柄をベースに、自分らしい意匠を加えて完成させました。また、現在は「琉球びんがた事業協同組合」の理事長を務めており、後継者育成や新商品開発などにも携わっています。「首里染織館suikara」では多様な紅型作品や工房の見学、体験も行っていますので、皆さんもぜひ“本物”に触れ、その魅力を体感していただければと思います。
主な取り扱い店舗:
首里染織館suikara(那覇市)/
沖縄県立博物館美術館・
ミュージアム
ショップ「ゆいむい」(那覇市)/
道の駅いとまん
「遊食来(ゆくら)」(糸満市)
琉球紅型 守紅 (もりびん)
TEL:098-992-2778
琉球漆器は数多くの工程を経て完成する伝統工芸品で、分業制で行われているのが特徴です。私は一貫して、上塗りを終えた後の漆器にさまざまな細工を施す加飾職人として経験を重ねてきました。「角萬漆器」に入社してから20年以上経ちますが、それ以前にも職人を務めており、45年余り琉球漆器に携わっていることになります。漆芸の世界は奥深く、道具の扱いや加飾技法など、追求するたびに「まだまだ学ぶことがある」と探究心をくすぐられます。
一言で“加飾”と言っても「堆錦(ついきん)」をはじめ、「沈金」や「螺鈿(らでん)」など、主に5つの技法に分かれています。通常職人はそのうちひとつの加飾技法を専門分野としていますが、私は5つの技法すべてを網羅しながら「角萬漆器」の商品づくりを担っています。琉球漆器独自の技法である「堆錦(ついきん)」は、赤花やゆうな、デイゴ、月桃など沖縄らしい植物の図案がよく知られていて、黒色や朱色の漆に立体感のある生き生きとした表情を与えてくれます。
漆器は「扱いが難しい」というイメージを持たれがちですが、実際は丈夫で軽く、機能に富んでいるのが特徴。私自身も自宅でいろいろな製品を使っています。皆さんもぜひ暮らしのなかに漆を取り入れ、実際に使って親しんでほしいというのが職人としての思いです。美術品として飾って楽しむこともできますが、むしろ使うことで真価を発揮するのが琉球漆器の魅力だと感じます。「角萬漆器」では若手職人がモダンな漆器も製作しており、伝統を継ぎながら“未来”をみつめています。
角萬漆器
TEL:098-943-3810
私は16歳の頃にアルバイトからこの業界に入り、1985年の「琉球ガラス村」創業当初よりガラス職人として働いています。若い頃からガラス作りを学び始めていたことで、すでに琉球ガラスの技法を一通り身につけていたため、20代半ばからは会社の商品製造と並行しながら自分の作品作りにも精を出しました。一からデザインを起こし、さまざまな技法を集約して完成させるオリジナル作品は、職人としての感性を磨くと同時に技術の幅も大きく広げてくれたと感じます。
作品は自分自身の姿が映し出されるものだと思います。私は昔から夜釣りが好きで、遠く頭上に広がる数多の星に胸を高鳴らせてきました。琉球ガラスで流星群を作ってみたいという一心で、試行錯誤の末に完成したのが「銀河」シリーズです。また、地上から見る夜空をイメージした作品「コスモ」は、空から星が降り注ぐさまを大小の気泡を用いて奥行きをもたせながら表現しています。下から光を当てると透過するため、星々が瞬く姿をガラスの中にとらえることができます。
現在「琉球ガラス村」の工房では、20代から70代まで約20人の職人が琉球ガラスの製作に携わっています。私は工房長として、若い職人たちがやりがいと誇りをもてるよう工夫しながら指導にあたっています。壺や大皿などの作品はもちろんですが、店頭に並ぶグラス一つをとっても、琉球ガラスの製作にはチームワークが要となります。だからこそ一人ひとりの技術が「未来」へつながるのだという気持ちで、これからもガラス作りに向き合いたいと思っています。
主な取り扱い店舗:
琉球ガラス村(糸満市)/
るりあん空港店(那覇空港内)/
そのほか県内ショッピングセンター等
琉球ガラス村
私はもともと三線を演奏するのが好きで、20代の頃にはコンクールなどで受賞することもありました。同じ頃、三線の修理で通っていた三線店で製作の様子を見ているうちに惹かれて、作り手の世界に入りました。そこから足かけ50年余り職人をやっていますが、三線の製作は奥が深く、一度もやめたいと思ったことはありません。毎日発見があり、一生勉強だと思って製作にあたっています。三線と一言でいっても、伝統的に7つの型をがあり、各々個性が違うので、見比べて勉強してみるのも楽しいです。
三線の音色にも関わってくる重要な「カラクイ(三線の弦を調律する糸巻き)」や「竹ウマ(弦を支えるパーツ)」という部位は、県内産と言われている物のほとんどを私が製作しており、音色はもちろん、「ちゅらかーぎー(美人)」な三線を作りたいという気持ちがあるため、細部まで心を配って作っています。今年、日本の「伝統工芸士」の認定を受けた際は「真壁(マカビ)型」と「知名大工(チニンデーク)型」の2作品を伝統的手法で製作しました。
原材料を守るのも我々の大切な務めのひとつだと考えているため、三線の要である貴重な木材「黒檀」を次へつなぐ「くるちの杜100年プロジェクト in 読谷」にも参画しています。三線は600年以上前から続く、沖縄が誇る音楽文化の中心的存在で、だからこそ絶やしてはいけない大切なもの。また、平和でなければ三線の音は途絶えてしまいます。未来にもこの美しい音色が響くよう、私ができることをこれからも真っ直ぐにやっていこうと思っています。
主な取り扱い店舗:
渡慶次三絃工房(那覇市)
渡慶次三絃工房
TEL:098-853-4731