現在、沖縄で親しまれている伝統工芸品の多くは
琉球王国時代に技術が磨かれることで
大きく花開きました。
独自の歴史と時代の変遷を経た多様な工芸品は
未来へ継ぎたい先人たちの技と情熱の結晶であり、
島の「記憶」を感じることができる
沖縄の文化そのものです。
やちむん
ぽってりとした素朴な風合いと躍動感のある鮮やかな絵付けが印象的な沖縄の焼物「やちむん」は、「身近な伝統工芸品」のひとつで、人々のくらしに溶け込み、お土産品としても人気を集めています。およそ6000年前に土器がつくられてから、歴史の中でかたちを変えながら発展を遂げ、1682年に琉球王府が製陶産業の拠点をつくろうと沖縄各地の窯を那覇市・壺屋に集めたことで、やちむんの代表である「壺屋焼」が誕生しました。現在は伝統技法を受け継ぎながら、若い世代の職人を中心に新たなデザインなども生み出されています。
染織物
沖縄における染織物のルーツを辿ると、中国や東アジア諸国と盛んに交易をしていた琉球王国時代にまで遡ります。沖縄の染色技法の代表といえば、華麗な色彩と模様が特徴的な「紅型(びんがた)」を思い浮かべる人も多いでしょう。紅型は主に王族や士族の女性によって着用されていました。織物は離島でも盛んに製作され、上質な宮古上布や八重山上布、久米島紬などは「貢納布」として贈答品や貿易品としても利用されていました。また、琉球王国時代から製造されている伝統的な染料「琉球藍」は、昔から多くの織物に使用されてきました。沖縄の歴史と切り離すことができない染織物は、紅型をはじめ、上布、絣、花織、ミンサー織といった多様な技法や種類を有し、現在もなお多くの人を魅了しています。
琉球漆器
中国から伝来した漆器は、沖縄独自の発展を遂げてきました。琉球王国時代、琉球王府は「貝摺奉行所(かいずりぶぎょうしょ)」と呼ばれる専門の役所を設置し、王家御用や献上用の漆器などを製作していました。1879年の琉球処分(廃藩置県)により、「貝摺奉行所」は廃止されましたが、その後も民間の工房などに技術が受け継がれ、現在に至ります。琉球漆器特有の技法「堆錦(ついきん)」をはじめ、螺鈿や沈金、箔絵など、細やかな匠の技が用いられた漆器は、まさに職人が織りなす芸術そのもの。ぜひ「本物」に触れ、琉球漆器ならではの美しさを体感してください。
琉球ガラス
琉球ガラスの歴史は今から100年以上前の明治時代中期頃にはじまったと言われています。しかし、戦争によってその歴史は一度途絶えることとなりました。戦後、駐留米軍が使用していたコーラやビールの空き瓶を再利用して「再生ガラス」が製造されるようになり、これが現代まで続く琉球ガラスの基礎となっています。1998年には沖縄県の伝統工芸品として指定され、名実ともに沖縄の文化を支える存在となりました。現在は県内各地で数多くの工房が開かれ、南国らしい色やかたちを映し出すことで、個性豊かな「日用品」として親しまれています。
三 線
中国から琉球王国に三線の原型となる「三絃(サンスェン)」が持ち込またのは14世紀末と言われています。17世紀初頭には宮廷楽器として正式に採用され、三線製作者を管轄する役人「三線主取(サンシンヌシドゥイ)」を設けるなどして、国をあげて名工を育て、優れた楽器を生み出してきました。同時代には組踊などの歌舞芸能が盛んになり、三線も琉球古典音楽の中心的な楽器としてその地位を確立していきます。長い歴史を経て現代へ受け継がれ、2018年には国の「伝統的工芸品」に指定された三線。沖縄旅行の際には、その独特の音色をぜひお楽しみください。