沖縄で育まれた自然や伝統、歴史や文化に触れて、
未来に紡ぐエシカルトラベル。
あなたの五感を刺激するおすすめのエシカルスポットを
北部・中部・南部の3エリアに分け、ご紹介いたします。
南部エリアでご紹介のスポットはこちら
老舗琉球料理店で歴史を味わう
那覇のビジネス街の中心地に、時が止まったような趣のある建物があります。「琉球料理 美榮」は県内でも珍しい琉球料理をコースで味わえるお店。首里の旧士族の家庭にうまれ、料理上手な母親の元で育った創業者 古波藏登美(こはぐらとみ)さんが1958年に那覇市美栄橋町でお店を創業。1960年に現在の久茂地に建築された店舗兼住宅は、今も情趣溢れる佇まいで営業を続けています。
外観は沖縄らしい赤瓦を使いながらも、客室は京都の数寄屋の様式を取り入れ、舟底天井に、段差のない床の間など、沖縄の古民家とはまた違う趣があります。手入れの行きとどいた美しい店内には、登美さんと2代目店主であった古波藏 保好(こはぐらほこう)さんが集めたやちむん、琉球漆器、琉球張子、紅型などの工芸品が並び、その一つ一つは博物館に展示されるような歴史あるもの。「登美は漆が大好きだったんです。」と教えてくださったのは女将の石川薫さん。3代目の古波蔵德子さんから譲り受けたという琉球絣の着物をお召しの姿から、美榮の受け継いできた信念を感じることができます。
手間を省かない、心を尽くした琉球料理
琉球料理はひとえに宮廷料理をさすのではなく、宮廷料理に加えて庶民の料理や行事料理も含めたもの。中国や日本をはじめとした外国との交易があった琉球王国はその影響をうけ、混ざり合い、琉球料理がつくられていきました。
美榮では、夕食は3種類のコースからメニューを選ぶことができます。料理の一つひとつは驚くほどの手間と労力がかかっており、特にお祝いの席でよく食べられている「中味汁」は、豚の胃と腸をきれいに洗い、匂いをとるための下ごしらえに相当な手間がかかるため1日では調理が終わらないほど。「『なかみの吸いもの』に格調の高さと美味とを感じさせる料理人は、誇りをもって琉球料理をこしらえているとみていい。」と保好さんが「料理沖縄物語」に記すように、手間を省かず、その手間が味につながるお料理です。
また、「東道盆(とぅんだーぶん)盛り合わせ七種類」に並ぶ2種類のかまぼこは、グルクンを捌きすり鉢で粘り気がでるまで丁寧にすって作られています。これは「みぬだる」も同様で、黒胡麻を油分がでるまですり鉢ですったものに、調味料を加え、これに豚肉を漬け込んだものを蒸して作られています。現代には便利な調理器具がある中でも、美榮では全て人の手で何時間もかけて下ごしらえされています。どれも県民にとっては馴染みのある食材ではありますが、これほどまでに美しく味わいのある一皿に昇華するまでには、手間を惜しまない琉球料理への愛情を感じざるを得ません。
歴史と伝統を守り抜く”変わらない努力”
創業から伝わる方法で忠実に伝統の味を守り抜く美榮の姿勢は、「変わらない努力」の上にあるもの。料理を提供する琉球漆器も同じように、約70年の歴史に幕を閉じた「紅房」の器を1年に1度修理に出しながら使い続けているそう。
料理だけでなく器や、しつらえ、接客までも創業者の思いを変えることなく今に受け継ぐ貴重な琉球料理を味わいに是非足を運んでみてください。
- 県産野菜を生かした伝統ある琉球料理を味わえる
- 歴史ある器や工芸品を楽しめる
- INFORMATIONS
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琉球料理 美榮
公式サイト
住所/沖縄県那覇市久茂地1丁目8-8
定休日/日曜・年始・旧盆(他に不定休日がございます)
営業時間/昼の部 11:30〜15:00・夜の部 18:00〜22:00
130年の伝統をつなぐ酒蔵
「瑞泉酒造(ずいせんしゅぞう)」は、1887年の創業から130年以上の歴史を誇る琉球泡盛の酒蔵です。首里城・継世門から徒歩2分の場所に店舗をかまえ、商品の購入や施設見学、試飲を楽しむことができます。
「瑞泉」という名前は、首里城第二の門「瑞泉門」の手前にある「龍樋(りゅうひ)」という龍を模った石の彫刻から流れる湧き水が素晴らしく美味しい水だったことから「めでたい、立派な泉」という意味の「瑞泉」と名付けられ、瑞泉酒造という名はこの意味にあやかり名付けられました。
600年を超える歴史があるとされる琉球泡盛ですが、琉球王国時代に泡盛の製造を許可されていた地域は「首里三箇」とよばれる崎山(さきやま)・赤田(せきた)・鳥堀(とりほり)の三町のみ。瑞泉酒造はそのうちのひとつである崎山町で今も変わらず泡盛と古酒の伝統を受け継いでいます。
毎日30名以上の人が参加する人気の酒造見学
瑞泉酒造の酒造見学では、まずは2階に上がりビデオで瑞泉酒造の成り立ち、琉球泡盛の製造方法、戦前の黒麹菌を使用した「御酒(うさき)」の製品化に至るまでの過程を学び、2階や1階でガラス越しに機械を見学することができます。この酒造見学は1日で30名以上、多い時で100名のお客様がいらっしゃるんだとか。
「時期によって異なりますが、工場は1ヶ月に2回のサイクルで泡盛を作るので、蒸米でお米の香りが充満している日もあれば、蒸留で匂いで酔いそうなほどアルコールの香りが室内にひろがっている日もあるんです」と教えてくれたのはこの日ガイドをしてくれた與儀さん。ガラス越しに見える大きな古酒の甕がずらりと並ぶ様子が見られるのは施設見学ならでは。
伝統を守り新しきをうむ、幅広い泡盛の楽しみ方
見学の最後には「試飲」を楽しむことができ、「飲み比べてみてください」と案内いただいたお酒はおすすめの新酒や古酒。古酒とは3年以上貯蔵された泡盛をさし、新酒と古酒を比較しながら楽しめます。同じ度数の古酒でも、3年古酒の「瑞泉 青龍」はすっきりとした味わいに、ピリッとくる後味。それに対し10年古酒の「瑞泉King crown」はまろやかな舌触りに驚きます。泡盛の貯蔵はステンレスタンクか、甕に入れますが、この貯蔵方法によっても味に変化があるんだそう。「ステンレスタンクは、甕ほど味に影響することがないので、比較的スッキリとした味わいに。甕だと土の成分も入るので口に残る余韻をしっかり感じることができます。」
古酒を楽しんだ後はリキュール商品の試飲もおすすめです。泡盛のアルコール度数は約30度以上のものが多いので、度数の高いお酒は飲み慣れないという方に向けてスパークリング泡盛や梅酒など、女性にも人気の商品が揃っています。「県産の柑橘・カーブチーを使用したリキュール『Kabuchii カーブチー』」は炭酸で割って、県産紅茶リキュールの『宵の紅茶』は、冬だとホットミルクで割って飲むのもおすすめです」と泡盛の新しい楽しみ方も教えていただけました。
古酒からリキュールまで、幅広い世代に向けて泡盛の魅力を伝える瑞泉酒造へお気に入りの1本を見つけに行ってみてください。
- 伝統を守り伝える取り組み
- INFORMATIONS
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瑞泉酒造
公式サイト
住所/沖縄県那覇市首里崎山町1-35
電話番号/098-884-1968
定休日/日・祝日
営業時間/月〜土 9:00~17:00 (見学最終受付16:00)
※酒造見学・試飲はご予約者様優先となりますので、事前ご予約をおすすめいたします。
戦後復興とともに賑わいを見せた「県民の台所」
那覇市国際通りのほぼ真ん中に、お土産店やブティック、製菓店など約60店舗の多様なお店がひしめく「市場本通り」の入口があります。ノスタルジックな雰囲気を感じるアーケードを進むと沖縄観光の定番スポット「那覇市第一牧志公設市場」へと続き、国際通りとはまた違った雰囲気を楽しむことができます。
牧志公設市場の歴史は戦後の闇市からはじまり、那覇市がそれらをたばねて1950年に牧志公設市場を開設しました。県民の台所として親しまれている牧志公設市場は、時代が進み現在は観光客も訪れる観光スポットとして定着しています。
「持ち上げ」システムで沖縄の食文化体験
市場の中は吹き抜けになっており、1階は鮮魚、精肉、漬物にもずく、海ぶどうなど多くの県産食材が並び、2階は食堂で沖縄の家庭料理を楽しむことができます。
精肉店では「チラガー」と呼ばれる豚の顔の皮や、豚の足先「チマグゥー」、豚の内蔵を綺麗に処理した「中身」など県外客が驚くようなお肉が店先に並び、「豚は鳴き声以外全て食べる」と言われる沖縄の「豚食文化」を感じることができます。鮮魚店では、鮮やかな色をした「イラブチャー(ダイ科の魚)」や「アバサー(ハリセンボン)」と聞きなれない沖縄の方言で慣れ親しまれている魚たちがずらり。
鮮魚店や精肉店では食べてみたい食材を購入すると、2階の食堂で調理してもらえる「持ち上げ」というシステムがあるため、味わったことのない沖縄の食材があれば是非挑戦してみてください。
スーパーでは体験できない、まちぐゎー(市場)の魅力
牧志公設市場ではお店の方との会話を楽しむことも醍醐味の一つ!食べたことのない食材は、食べ方の相談をすると地元の人でも知らないとっておきの味わい方を教えてくれることも。試食をさせていただけるお店では、島らっきょうにゴーヤー、パパイヤなど沖縄ならではの食材をつかったお惣菜を試せるので「ゴーヤーとこの組み合わせが合うんだ!」なんて意外な発見もあるはずです。
市場の活気とお店の人たちの優しさについ長居してしまうこと間違いなしの牧志公設市場は、沖縄の食文化の魅力がつまったおすすめスポットです。
- 沖縄の食文化を体験できる
- 地元の人と触れ合える
- INFORMATIONS
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那覇市第一牧志公設市場
公式サイト
住所/沖縄県那覇市松尾2-10-1
定休日/毎月第4日曜日(12月は除く)
1月1日~3日(正月)・旧暦 1月1日~2日(旧正月)・旧盆の後2日
営業時間/8:00~22:00(店舗により異なります)
※2階食堂L.O 20:00
※1階からの持ち上げサービス 20:00
環境にも健康にもいい旅行のかたち
世界遺産の「斎場御嶽(せーふぁうたき)」や、沖縄の歴史・文化を体験できる「おきなわワールド」、海人の島「奥武島(おうじま)」など、沖縄観光の人気スポットがひしめくハートのまち南城(なんじょう)市。太平洋と中城湾に面する南城市の海は美しく、琉球創生の神・アマミキヨの伝説が数多く残る聖地は自分と向き合う時間を与えてくれます。
そんな魅力溢れる南城市でおすすめなのが「ポタリング」。ポタリングは英語でぶらつく、ブラブラするという意味の「Putter」から派生した和製英語で、「目的地を決めずに自転車でのんびり散歩をする」という意味。車であっという間に通り過ぎてしまう道も、自転車で風を感じながらゆっくりと散歩をすることでたくさんの発見があります。
小さな発見を繰り返し、自分と向き合うポタリング時間
南城市観光の拠点「がんじゅう駅・南城」では、1時間から電動アシスト自転車を借りることができます。
今回はがんじゅう駅を始点とし、周辺のスポットを思うがままにポタリング。まずは「斎場御嶽」へ向かいます。「斎場御嶽」は琉球王国最高の聖地。がんじゅう駅には斎場御嶽に関する展示と上映室があるので、事前に基本的な情報を知ってから行くのがおすすめ。
入場券の券売所がある南城市地域物産館から斎場御嶽までは車での移動ができず、約500mの距離は徒歩だとおよそ7分〜10分ほどですが、自転車だとあっという間に到着。入口横にある自転車置き場に駐輪をして中へ入ることができます。
斎場御嶽は今もなお信仰の中心として大切に守られている場所。入る前にマナービデオをしっかり確認をし、敬う心を持って訪れましょう。
続いてがんじゅう駅から奥へ進み「知念(ちねん)岬公園」に向かいます。知念岬公園は太平洋が一望できる絶景スポット。コバルトブルーの海の先には神の島「久高島」や、無人島の「コマカ島」を望むことができます。自転車で遊歩道を下っていくと、視界いっぱいに海と空の景色が広がり、自分と向き合う時間を与えてくれるよう。夕日や朝日の時間に来ても美しい眺望を堪能できます。
知念岬公園からドライブスポットとして人気の「ニライ橋・カナイ橋」に向けて自転車をのんびり走らせます。ニライ橋・カナイ橋の絶景スポットは、U字にカーブを描く全長660mの橋をのぼった先にある展望台。電動自転車のアシスト力に助けてもらいながら絶景を目指します。ニライ橋・カナイ橋は歩道が整備されており、車では気づけない歩道に設置されているレリーフも楽しむことができます。息を切らしながらたどり着いた展望台からの景色はニライカナイ(理想郷)という名の通り。下に広がる絶景を眺めながら、ここまで橋を上り切ったという達成感が味わえるのもポタリングならでは。
レンタサイクルでエシカルな過ごし方
ポタリングの魅力は排気ガスを出さない環境に優しい旅行ができることに加え、近所の子供たちが挨拶をしてくれたり、見たことのない植物が気になったりと、その土地を知り、地域の人々の温もりを感じる旅行ができること。
南城市では、がんじゅう駅の他にも「Fisherman’s coffee しま笑店」「コンドミニアムホテル 沖縄夢登」「あざま共同売店」でレンタサイクルを行っているので、たまにはのんびり海風を感じながら南城市を満喫してみませんか?
- 豊かな自然や歴史を体験できる
- 環境に配慮した優しい移動手段
- 車では通れない地域の魅力を再発見
- INFORMATIONS
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がんじゅう駅・南城
公式サイト
住所/沖縄県南城市知念字久手堅541番地
電話/098-948-4660
営業時間/9:00~18:00