おきなわソウル楽器”三線”

#南部

■沖縄の三線文化を楽しく応援できる
三線の樹プロジェクトとは?

沖縄の伝統工芸品である三線は、伝統芸能や民謡、ポップスなどの伴奏に用いられる絃楽器。日本のみならず、世界中で愛されている三線の普及率は右肩上がりです。三線愛好者が増えることは喜ばしい反面、業界的には取り組むべき課題も多いそう。沖縄県三線製作事業協同組合にお邪魔して、三線を取り巻く現状をお聞きしました。

■気軽に三線に触れられる沖縄県三線製作事業協同組合

那覇の栄町市場から徒歩1分、住宅街に佇む沖縄県三線製作事業協同組合は、沖縄県内で三線を製作している三線職人の団体です。三線や教材、付属品の販売、三線教室も開催していて、誰もが気軽に訪れることができます。
スタッフの皆さんは三線に精通しているので、「これから三線を始めたいけど、どうすればいいですか?」、「どんな価格帯の三線を購入したらいい?」、「沖縄滞在中の1週間で1曲を弾けるようになりたい!」など、どんな相談にも丁寧に対応してくれます。マンツーマンの三線教室入門(45分、3,500円)や短期集中コースもあり、滞在中は三線のレンタルも可能です。

「最初に基礎をきっちり学べば、あとは自分のペースで上達できるのも三線のいいところ、県外に戻ってからはzoomでサポートします。最近は親子やカップルでレッスンを受ける人も増えています」とスタッフの新垣恵さん。

■高まる三線需要と比例して見えてきた課題

事務局長の仲嶺幹さんが続けます。
「本土復帰以降、三線の売れ行きは右肩上がりですが、販売数の7〜8割は海外で生産した三線です。三十年ほど前までは、沖縄民謡に興味を持った人が職人から三線を購入する流れが一般的だったのですが、インターネットで手軽に海外産の三線が買えるようになり、市場は様変わり。ポップスなどを奏でる新しい三線文化が生まれています。県内の三線普及率も伸びていますが、演奏団体の流派に属する人は減って、沖縄民謡の魅力である沖縄言葉を学ぶ機会が失われているのも現実。本土とは異なる発音をネイティブに話せる先輩方がいる間に、沖縄の言葉と三線文化をセットにして継承する仕組みが必要です」

■三線ができるまで。国産では需要と供給のバランスが取れない難しさ

平成20年ごろの調査では、国内で年間4万丁の三線が販売され、そのうち3万丁が海外産でした。ではその3万丁を国産できるか? というとそれは難しいそうです。なぜなら、大量生産を目的とする人件費が低い海外は、大量に切り倒した木材を型にはめて、どんどんカタチにしていきます。結果として商品にしてから歪みなど不具合が出ることもありますが、県産の半分ぐらいの値段で購入できます。
対して沖縄では、職人が仕入れた材木をさらに厳選し、丁寧に手作りするため、年間で生産できる数は限られます。また、ベテランが作る高級三線の需要はありますが、安価な三線のシェアは海外産が占めているので、若手後継者の育成が難しい現状があります。

■棹の原料となる黒木の造林と
代替材のブランディング

三線の音色の良し悪しを決める棹(さお)の材質で、一番良いとされている黒木(くろき、沖縄の言葉でくるち)は、戦前は八重山地方(西表島や石垣島)に自生していて、その苗を沖縄本島の奥武山公園などに移植して造林していました。しかし、戦争で本島の黒木は全滅し、さらに昭和47年には西表石垣が国立公園に指定されたため、八重山の黒木も使用することができなくなりました。本土復帰前後には、海外から黒木を輸入することになり、現在は県内で製造する三線の黒木も輸入に頼り切っている状態です。

黒木は育成に100年以上かかります。「100年後の沖縄をくるちの杜でいっぱいにしたい」と、アーティストの宮沢和史さんや有志、組合が連携して始めているのが「くるち(黒木)の杜100年プロジェクト」。読谷村の座喜味城址内でくるちの苗を育て、将来的に沖縄の黒木をブランドにしようという啓蒙活動です。ゆくゆくは造林できるように働きかけを続けています。
また、黒木以外にも良い音色が出る代替材をPRするために、宮沢和史さんをはじめとするアーティストとのコラボ三線も積極的に発表しています。

■楽しく参加できる
息の長い取り組みを目指して

三線の材料は黒木だけではなく、太鼓の胴や蛇皮などすべてが不足しています。そこで、組合では成長が比較的早いチャーギ(イヌマキ)やモクマオウなど県内にすでにある代替材を苗から育て、造林しようと「三線の樹プロジェクト」をスタート。大切なのは、三線ファンにも参加してもらいながら、息の長い取り組みにしていくことだと仲嶺さんは話します。
例えば、木を植える労働を喜びとして参加者と共有する、子ども達に三線を教えながら木を育てる大切さをセットにするなど。今年は700万円のクラウドファンディングを達成しました。その費用で子どもに無料で三線を教え、くるちや代替材の種を買って、毎日水をやりながら成長を見守る。ある程度育ったら、企業に苗を買い上げてもらい、公園の緑地で苗木として使ってもらう。その収益で再び苗木を育てたり指導者への費用に当てたりと、循環しながら持続していける活動です。

■作る・愛でる、三線の楽しみ方は幅広い

組合では年に2回、「三線大学」という三日間のワークショップを行っています。これは、材木から切り出した棹を削り上げ、胴と組み立てるまでの一連を体験する作業で、その後は組合が塗料を塗って仕上げ、三カ月後に自宅に届く人気の企画。定員12名の三線大学は毎年満員御礼。募集後はすぐに定員に達するほどの人気で、リピーターも多く、半分以上は県外からの参加者だといいます。
「三線には演奏する、聴く以外にも、愛でるという文化があります。自分で作るオリジナル三線は格別だと思いますよ。今後は、三線愛好者が、三線文化の継承に貢献できる参加型の楽しみ方や、博物館などと連動して、古い特別な文化財の知識といったディープでコアな情報を発信するなど、これまでとは違うアプローチもしていきたい」と仲嶺さんは締めくくってくれました。
次回の沖縄旅行では、奥深い三線の魅力に一度触れてみませんか?

INFOMATION
沖縄県
三線製作事業協同組合
  • 住所/沖縄県那覇市安里360−7
    和光マンション
  • 詳細を見る
掲載日:
2023.10.26
更新日:
2023.10.27

※掲載内容は、掲載日もしくは更新日時点での情報です。最新情報は、ご利用前に各施設などにご確認下さい。

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花笠マハエ