■廃自動車の窓ガラスから生まれる
サステナブルな食器「mado」
ゆいレール以外に鉄道がない沖縄県は、日本有数の車社会。県民が日々の通勤や移動に使う交通手段はほとんどが自家用車で、県外からの観光客のレンタカー利用率は全国でもトップクラスといわれています。そんな沖縄県では、月に4,000〜6,000台の自動車が廃車になり、毎年2,000万〜3,000万円かけて県外に廃棄物を運び、処理してきました。
■リサイクル会社×ガラス職人が協業。窓ガラスに新たな価値を
廃車になった車は、鉄・非鉄金属部分は再利用されていますが、エアバッグと窓ガラスはリサイクルされることなく、廃棄物埋立処分場へ。しかし近年、環境基準が厳しくなり、処分費用も高騰。沖縄県うるま市のリサイクル会社「拓南商事」は、窓ガラスの処分に頭を悩ませていました。
そんな時、ビジネスマッチングでの縁で、手作りガラス工場「琉球ガラス村」と協業することが決まりました。両者は協業し、廃車となった車の窓ガラスをアップサイクル。処分される運命にある窓ガラスを食器「mado(まど)」に生まれ変わらせるプロジェクトを立ち上げました。
窓ガラスを粉砕するのは拓南商事。細かくなったガラスは、琉球ガラス村のガラス職人によって新たな形によみがえります。
■バリエーション豊かなmadoシリーズ
madoシリーズは現在、ロックグラス、タンブラー、ジョッキ、小鉢、プレート、一輪挿し、デカンタ、ランプなど複数の商品があり、カラーバリエーションはアイスグリーンとスモーキーブラックの2色が用意されています。
車のサイドガラスが原料となっているアイスグリーンカラーは涼しげで爽やか。リアガラス(バックサイドガラス)を使用したスモーキーブラックは重厚感が感じられ、男性へのプレゼントとしても人気です。どちらも着色剤不使用。素材そのものの色合いが楽しめます。
デザインは、ダイヤ柄とモール柄の2種類。波のように見えるモール柄は昔から琉球ガラスで使われてきた伝統的な模様です。現在は型を使って模様づけをしますが、物資が不足していた戦後直後は廃車になったタイヤスプリングを利用してモール柄を作っていたのだそうで「沖縄が守り続けてきた模様を受け継ぎ、使い続けていきたい」と、この柄を採用。
もう一方の菱形の網目状になっているダイヤ柄は、拓南商事のグループ会社「拓南製鐵」の鉄筋の模様にちなんだものです。拓南製鐵の鉄筋は表面にダイヤ形の模様がついているのですが、この模様の入った鉄筋は日本では拓南製鐵だけ。そのようなことから、縁のあるダイヤ柄を採用することに決めたのだそうです。
シンプルでスッキリとしたデザインのグラスは、程よい大きさと重さで、持った時にしっかりと手に馴染む心地良さが魅力です。
そんなmadoシリーズは2022年10月にグッドデザイン賞を受賞。複数の企業がSDGsの思考を基に手を組んだプロジェクトということや、食器会社が車両を廃棄するリサイクル会社の窓ガラス廃棄問題にたどり着いた点などが評価されました。また、第25回商工会特産品フェア「ありんくりん市」の特産品コンテストでは奨励賞を受賞しました。
2019年の産業祭りで初めてお披露目されたmadoシリーズは徐々に認知度が高まり、県内のホテルや飲食店でも採用されはじめています。
職人によってひとつひとつ手作りされているため、それぞれ表情が微妙に異なります。琉球ガラス村内のガラスショップ以外にもオンラインショップで購入することができますが、ぜひ手に取ってピンときたものを選んでみてください。