■ヴィーガンからフェアトレードまで、
スパイスカレーで”食を知るきっかけ“を作りたい
那覇空港から車で20分ほど南下した「南の駅 やえせ」にあるナチュラルファーム「Halever」は、オーガニックや農薬不使用の季節の野菜を使用し、環境や体に優しいスパイスカレーのお店。店長の小松崎礁(こまつざきしょう)さんにお店の成り立ちや、食に対するこだわりを聞いてみました。 ※ 現在はキッチンカーでの営業となっております(2024年3月時点)。
神奈川県から移住し、沖縄県で耕作放棄地の再生ボランティアとして活動していた小松崎礁さん。3年ほど前、南城市の大里で「さし草屋 joy工房&茶屋」を営む與儀喜美江さんから、沖縄ではあちらこちらに生えている雑草のさし草には、多くの栄養素が含まれていること、さまざまな効果が証明されているスーパーフードであることを教わりました。将来の食糧難に備えて今からできることを考えていた小松崎さんは、さし草の可能性に興味を持ち、再生ボランティアで出会った及川晴香さんとともに、「南の駅 やえせ」でさし草を使ったカフェをオープンすることにしました。
■さし草&スパイスで、
これからの新しいカレーづくり
もともと神奈川県で飲食店を営んでいた小松崎さんはスパイス料理を得意としていました。お店を始めるならさし草と、スパイスを使ったカレーを充実させたいと考え、まずは使いたくない食材をリストアップし、メニュー開発をスタートさせました。最初からヴィーガンを意識したわけではありませんが、できるだけ動物性の食材を使わずにコクと旨味を出したいと、かなり苦戦したそうです。
店名のHaleverは、沖縄方言で農家や畑(ハルサー・ハル)を意味するHalと、英語のevergreen(常緑・いつまでも衰えない植物)をつなげた造語。小松崎さん、及川さんの思いがひと目で伝わる温かい言葉です。メニューは旬の野菜を使ったスパイスカレーを常時3〜4種類ほど。乳製品不使用のヴィーガンやアレルギー28品目不使用のカレーもあります。ヴィーガンカレーは口コミで外国人旅行客に広がっているようで、海外からのお客様のオーダーも多いようです。
■調理の工夫でフードロスを軽減
お店で使用する食材は、近隣の農家さんからいただくことも多いそう。収穫したものの、皮が厚かった、葉の乾燥が始まったなど、出荷するには少し見栄えが悪くなった野菜がHaleverに届きます。それらはソースにしたり、砂糖や塩、アルコールで漬け物にしたり、缶詰や瓶詰にしたりと、最後までおいしくいただきます。フードロスを極力なくしたいので、例えば残ってしまったターメリックライスには麹を加え発酵させて甘酒に。仕上がった黄色い甘酒は、旨味と甘味が抜群の調味料に早変わりし、カレーのコクにひと役買ってくれます。発酵や腸内細菌にも詳しい小松崎さんは、新鮮で栄養価が高い旬の野菜を、体内に負担が少なく、おいしく提供できるよう、日々考えています。
自家菜園ではパパイヤや芋、葉野菜を育てています。近所の農家さんのところへ収穫のお手伝いにいくこともあります。お礼はもちろん採れたて野菜。
■辛くない、体に優しいスパイスカレー
一番人気のメニューは、琉球ハーブカレーとVegan有機フェアトレードカレーが両方いただけるツインカレー(1350円)。本日の付け合せ野菜は、仏手柑(写真左の手のような野菜)で香り付けしたパパイヤの漬物とクミンやフェンネルとマリネしたオクラ。さし草やタイム、オレガノが入った琉球ハーブカレーは口の中に広がるスパイスが甘くもあり、スパイシーでもあるのに野菜がうまくまとめてくれて、とってもまろやか。Vegan有機フェアトレードカレーはアレルギー28品目不使用。ヴィーガンとは思えないほど深いおいしさ。オクラとパパイヤはシャキシャキ食感が楽しく、口の中をさっぱりとさせてくれます。
■Vegan有機フェアトレードとは
Vegan有機フェアトレードカレーは「考える食シリーズ Vol.1カカオカレー」として商品化。ソロモン諸島の有機カカオと沖縄の食材を組み合わせたカレーです。「誰がどんな思いで作ったのか、どんな食材が入っているのか、どんな環境で育ち、流通したのか」こうしたことを考えるきっかけになれば、という思いからスタートした企画です。お問い合わせをすれば、通販も可能です。
カレーはご飯にもこだわっていて、糖の吸収を和らげるようにと雑穀を混ぜています。今日のカレーには、減農薬の白米(上)から時計回りに、ターメッリック、アマランサス、大麦、キヌア、さし草、真ん中のパプリカ。雑穀にはミネラルが多いので、普段外食が多い人にぜひ食べてもらいたいと小松崎さん。
■ネーミングが気になる、
ドリンクメニュー
腸活ラッシー、発酵ドリンク、有機コーヒーフェアトレードなど、ドリンクメニューも豊富です。「お客様がさし草って何? フェアトレードって何? など、質問してくれたらとてもうれしいです。私達が提供しているお料理が、何かを知ってもらうきっかけになれば。このお店はそういうお役目でありたいと思っています」と及川晴香さん。
小松崎さんは食育アドバイザーとして、近所の保育園「おなかの中から保育園」の給食も担当しています。スパイスを使いつつ辛さを抑えたカレーは、小さい子どもに好評で、この日もおなかを空かせた子ども達がやってきました。
Haleverは、駐車場から続く広いイートインスペースに面しています。隣のテーブルとの間隔も広いので、お子様連れでも立ち寄りやすくなっています。併設しているお土産品店では、沖縄や八重瀬町の特産品が購入できます。
「ここ数年の感染症の影響もあって農作物が売れ残り、需要と供給のバランスが崩れている現状があります。農家さんと作物への感謝の気持ちを忘れず、どうすればフードロスをなくしていけるか、一人ひとりで考えていけたらいいなと思います」と話す小松崎さんと、一つひとつの問いに丁寧にお応えくださった笑顔が素敵な及川さん。
豊かな緑に囲まれ、ぐしちゃん浜や玻名城ビーチにもほど近い「南の駅 やえせ」。
南部観光の際にはおすすめのお立ち寄りスポットです。