やんばる島豚を通じて
サスティナブルな食文化を
伝える島豚七輪焼満味

#北部

「足跡以外の命を全ていただく」といわれる沖縄の豚料理文化。本島北部・名護市にある「島豚七輪焼満味(まんみ)」。店主の満名匠吾(まんなしょうご)さんが考える、サスティナブルな沖縄の食文化とその未来についてお話を伺いました。

■やんばるの食文化を伝える島豚専門店「満味」

名護岳のふもとの集落・伊差川(いさがわ)に、やんばる島豚とやんばるの食材が楽しめる料理店「島豚七輪焼満味」があります。

満味は「足跡以外はすべて食べられる」と語り継がれる沖縄の伝統的な豚食文化を体現した、やんばるで育った豚が食べられる「島豚ひとすじ」の専門店。
豚肉に限らず、お米や塩、野菜も地元農家と協力して、やんばるの食材がふんだんに食べられる唯一無二のお店として、足繁く通う常連客や観光客で賑わいます。

■やんばるで生まれ育った料理人が考える沖縄の食文化

満味を営むオーナーの満名匠吾さんは、自然豊かなやんばる育ち。小さな頃からおじいに連れられて、畑の手伝いや海で漁の手伝いをして過ごします。「伊江島(いえじま)に沈む夕陽の美しさは今でも忘れられない」と語ってくれました。

食を極めたいと、一旦沖縄を離れて県外の飲食店で修行を重ねた満名さん。修行を重ねていくうちに、沖縄の食文化やお酒について向き合うようになります。

沖縄の豚の食文化として「足跡と鳴き声以外は食べられる」といわれているのに、その文化を実践しているお店がないことに着眼した満名さん。「沖縄の豚を無駄なく食べられるお店」をコンセプトに満味をオープンしました。

■満味が大切にしている4つのこと

①豚を丸ごと、味わい尽くす
豚一頭の命を無駄にすることなく味わうため、先人たちから受け継がれる技術を守る。肉のカットや調理に細心の注意をはらいます。

鰹節と豚の赤身肉を甘辛く煮詰めたはんちゅみ

「スーチカー」と呼ばれる塩漬けや、「はんちゅみ」とよばれる肉そぼろなど、沖縄ならではの味わいを楽しめるのはもちろんのこと、豚肉では珍しい刺身が味わえたり、ホルモンや赤身、ロースなど、ありとあらゆる部位を七輪でじっくり焼いたり、しゃぶしゃぶにしていただくことができます。

足跡以外はすべて食べられる、命を大切にいただく沖縄の文化を満味で体験できるのです。

②やんばるで食べてもらう

やんばる島豚は、我那覇(がなは)畜産によってこだわりの餌と美味しい水でのびのびと育てられています。そして、島豚が育つ場所や加工する場所は、お店から車で15分。最高のタイミングで食べられる理想的な立地です。

美味しくするために飽くなき探究心を絶やさない生産者とのアクセスが近いことで、最高の味を引き出すのです。

例えばハツ(心臓)の刺身は鮮度が命。やんばるで培った生産者たちとの信頼関係があるからこそいただける、ここでしか食べられない部位といえます。ハツ刺しは、新鮮なものが入荷した日の限定メニューです。

②豚を丸ごと、味わい尽くす
豚一頭の命を無駄にすることなく味わうため、先人たちから受け継がれる技術を守る。肉のカットや調理に細心の注意をはらいます。

③野菜や調味料にもやんばる産を使う
世界自然遺産に認定されたやんばるの森は、日本の中でも唯一無二の豊かな生態系が育まれているエリアです。その豊かな土地で育まれる野菜や、お米をいただけるのが満味の魅力。自然と向き合い、風土に合った持続可能な生産を続ける食材作りのプロが育てた食材。それを最高に美味しい状態でプロデュースするのが満味の役割といえるでしょう。

④豚の味わい、豚にまつわる文化を伝え紡ぐ

満味では、満名さんやスタッフが部位ごとに美味しく食べられる焼き方や、沖縄の豚にまつわるエピソードをお客さんに伝えています。終戦後、何もかも失った沖縄へハワイに住む沖縄出身者たちが550頭の豚を送った有名なエピソードがあります。また「足跡以外は食べられる」という言葉があるのですが、豚の鳴き声は夜の闇のエネルギーを祓ってくれると信じられていたことなど、豚にまつわる話はつきません。やんばるで島の文化や歴史を聞きながら、やんばる島豚をいただくことで沖縄の奥深い食文化に触れることができるのです。

■先人の叡智を未来につなぐアメソコ・ネソコ

「豚から学んだ知識をたくさんの人に伝えたい!」と満名さんが新しく始めた地域食文化の発信プロジェクト「アメソコ・ネソコ」
https://www.instagram.com/amesoko_nesoko/)。

かつての沖縄は、家畜と共に竈門(かまど)のある古民家で暮らしていました。家畜と共に農産物を育てながら循環型の暮らしを営む。「そこで培われた叡智(えいち)を子供たちに伝え、未来を託す」ことを考える満名さん。

「人間が自然の一部である」ことを思い出せる場を残したいと、竈門が残る古民家を活用して、地域の人々と一緒に伝統的な琉球菓子の勉強会や旧暦カレンダーの制作を行っています。

消えゆく島の文化を見つめ直し、未来につなぐこと。一人の島人として、満名さんの食文化への探求の旅はまだまだ続きます。

INFOMATION
島豚七輪焼満味
  • 住所/〒905-1152 沖縄県名護市伊差川251
  • 電話番号/0980-53-5383
  • 営業時間/17:00〜21:00
  • 詳細を見る
掲載日:
2023.10.26
更新日:
2023.10.27

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