沖縄県読谷村(よみたんそん)にあるやちむん(焼き物)工房「陶眞窯」。創業約50年、チャレンジ精神旺盛な父・創業者の背中を観て育った子どもたちが、工房を受け継いでいます。あたらしい伝統工芸のあり方について、二代目の相馬大作(そうまだいさく)さんにお話を伺いました。
■伝統を繋ぎながら進化を続ける陶眞窯の魅力
そよ風が吹くサトウキビ畑が連なる沖縄県読谷村座喜味(ざきみ)。そこに沖縄の伝統工芸「壺屋焼」を育む工房「陶眞窯」があります。陶眞窯は神奈川県出身の陶芸家・相馬正和(そうままさかず)さんによって昭和50年(1975年)に設立。もともと料理人でしたが、料理が盛り付けられる器に興味を抱き、沖縄に伝わるものづくりに魅せられ、那覇市壺屋にある「育陶園(いくとうえん)」でやちむんを学んだ後、独立を果たしました。伸びやかで美しい筆使いによる染付模様が陶眞窯の器の魅力。唐草、魚文、デイゴ、ブーゲンビレア、ドットなど、バラエティに富んだデザインが人気です。
■やちむんを通じて五感にふれる複合施設
陶眞窯は器を作るだけではなく、体験教室、ギャラリーショップ、カフェ、宿泊施設が併設されています。沖縄の「やちむんづくり」を楽しんだり、魅力的な器を買ったり、陶眞窯の器に盛られた美味しい料理を食べたり。。。他の工房とは一味違う、さまざまなサービスを提供する工房として訪れる人に喜ばれています。
■陶眞窯の次世代が担う新たなチャレンジ
常に新しいものへチャレンジする父・相馬正和さんを間近に見続けてきた息子の相馬大作さん。土づくりから釉薬まで徹底したこだわりとチャレンジで数多くの作品を生み出す姿勢に畏敬(いけい)の念を抱きます。その半面、工房が持つ長年の運営課題についても意識するようになりました。自分を始め、工房に勤める見習いやスタッフが5年10年働き続けても食べていくのが必死の状態。作り手の暮らしの改善の必要性を感じていました。
ものづくりが好きな大作さんが掲げる「陶眞窯として100年後もものづくりができる場所でありたい」という経営理念。その実現には「作り手たちの生活の質の向上」は、まさに取り組むべき課題です。正和さんにその必要性を何度も伝え、株式会社SOMAを設立。作り手だけでなく経営者の一員として数字を見て、生産ラインの効率化を図り持続可能な事業へとシフトしました。
やちむんは、昔から陶工たちの分業作業で作られます。「父からはよく他力を借りる大切さを教わりました。ものづくりは他力があってこそ。法人化に関しても同じことでした」と語る大作さん。土を作る人、ろくろを回す人、染付をする人、数字を見る人、お客さまをもてなす人、陶工を育てる人など、それぞれの役割が集まって組織が回っていく。現在、陶眞窯の運営は長男の大作さん、絵付けは長女の千恵子(ちえこ)さん、カフェスペースは次男の正尚(まさなお)さんがそれぞれ担当しています。先代を受け継ぐ3人の子供たちが、未来へつなぐために陶眞窯に新しい風を入れていく。時代の変化に合わせながら、100年後のものづくりの場として進化する陶眞窯の未来が楽しみです。
■陶眞窯の魅力がつまったカフェスペース
陶眞窯の併設している「ギャラリーカフェ群青(ぐんじょう)」は、相馬正和さんの次男・正尚さんが、イタリア人から教わった本格窯焼きピザを取り入れたカフェとして2016年にオープンしました。実際にイタリアへ渡り、各地域のピザを食べ歩きながら納得のいくピザを完成させます。
一番人気の「島野菜ピザ」は、厳選した小麦を使い時間をかけてじっくりと生地を発酵させます。陶眞窯で破損した陶器のかけらを使い正和さんと正尚さん親子ふたりで作った、シーサーの顔をしたピザ窯で熱々に焼き上げます。外はカリカリ、中はモチモチとした食感。そしてこだわりのとろける濃厚なチーズがたまりません。陶眞窯の器に盛りつけられた、島野菜をふんだんに載せたピザのおいしさは、きっと旅の記憶に刻まれることでしょう。
- 住所/〒904-0301 沖縄県中頭郡読谷村座喜味2898-21
- 電話/098-927-9167
- 営業時間/10:30~17:00
- 定休日/水曜