沖縄市の中心部にある「コザゲート通り」は金曜日土曜日になると爆音のクラブミュージックや英語が飛び交い、店内を覗けばアメリカ映画のワンシーンのような光景が広がっています。
今回は約2時間、うちなんちゅさえあまり行ったことがないであろうコザのディープなスポットを、現地ガイドと一緒に巡るまちまーい(街歩き)ツアー「ディープタウンコザ・ナイト」を紹介します。
■そもそもコザってどんな場所?
戦後、沖縄市は米軍基地の建設とともにアメリカ人を対象とした商業・娯楽サービス業で急激に発展しました。
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ミュージックライブバーやスナックをはじめ、多国籍飲食店が軒を連ねる嘉手納基地のゲート2からコザ十字路まで広がるエリアを、当時アメリカ人が胡屋地区の読み方(koya)のyをzに見間違えたことからKOZAと呼ばれたと言われています。
その後、米軍が越来村(当時、現在の沖縄市)に宣撫(せんぶ)隊本部を置き「キャンプ・コザ」と読んだことが語源とされコザ市が誕生。美里村との合併を経て現在は沖縄市となりましたが、今なおコザと言う名称が愛され続けています。
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軍人を相手にしたライブハウスや飲食店からジャズやロックなどを中心としたアメリカの音楽文化や食文化が入ってくることで、アメリカと沖縄の文化が混ざり合ったチャンプルー文化が育まれました。
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現在でもその姿は大きく変わることなく異国情緒を感じさせる沖縄のディープなエリアとして人気があり、新たな沖縄観光エリアとしても脚光を浴びています。
■安心できるガイドと一緒にコザへ
今回ガイドを務めてくれるコザ育ちの宮島真一さんとコザ・ミュージックタウンで待ち合わせします。1組につきコザに精通した1名のガイドが付き添い、コザのどんなところを見たいのか?どんなお店に行きたいのか?などヒアリングを通して約2時間のオーダーメイドツアーを構成してくれます。今回は宮島さんが事前にセレクトしてくれたおすすめの3店舗に連れて行ってくれることになりました。
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取材陣全員がコザの街を歩くのは初めてだからとても楽しみにしていたということを宮島さんに伝えると「僕も楽しみにしてました! 呑めるからっ!」と大笑い。軽快なトークでツアーが始まります。
■コザのマイクロブルワリー「コザ麦酒工房」
最初に向かったのは10種類以上のオリジナルクラフトビールを製造している宮島さんおすすめの居酒屋「コザ麦酒工房」です。
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ここでしか呑めない「酒豪伝説エール」は100%植物素材の肝臓サポートサプリメント酒豪伝説とコザ麦酒工房がコラボしたクラフトビールです。呑み過ぎた翌朝もスッキリしている不思議なクラフトビールだそう。
他にもモルトの旨味と甘味、ホップの苦味を存分に味わえる下面発酵製造の「コザラガーラガー」、モルトの甘味とホップの苦味が絶妙なバランスが魅力の「三線ペールエール」など気になるクラフトビールがたくさんあります。
「ありっ! 乾杯!」。
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コザで軒を連ねる多国籍飲食店は、本場の味をそのまま提供している店が多いそうです。宮島さんがおすすめするコザ麦酒工房のケサディーヤも本場メキシコに引けを取らない本格的な味わいでビールとの相性は抜群!
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牛肉の旨み、トマトと玉ねぎのさっぱりとしたソースとしっかり効いたハラペーニョの辛さが食欲を掻き立てます。宮島さんがコザのことをユーモアたっぷりに教えてくれるので、知的好奇心もかなり掻き立てられます。その人柄に誰もが心を掴まれるのでしょう。ガイドしたお客様とSNSでつながり、今も連絡を取り合う方もいるそうです。
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宮島さん自身がツアーガイドを心から楽しんでくれるので私たちもますます楽しくなってきたところで、2軒目のライブハウスへと移動を開始しました。
■Live Music Bar JETへ
続いて案内されたのはワンドリンク制・ライブチャージ不要で今年結成30周年を迎えるバンド「JET」の生演奏を楽しめる老舗の「ライブミュージックバーJET」。
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60〜70年代のアメリカン・クラシックロックを中心に、どこかで耳にしたことがあるような名曲を演奏してくれて思わずテンションが上がります。
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ライブハウスが揺れるほどの重低音が身体中に響き渡り観客のボルテージは高まるばかり。沖縄らしく指笛が鳴り響き、歓声やMCは標準語、ウチナーグチ、英語が飛び交っていた様子はチャンプルー文化を感じます。ここは日本でもアメリカでも沖縄でもなくチャンプルー文化で発展を遂げたコザの街そのものでした。
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このまちまーい(街歩き)ツアー「ディープタウンコザ・ナイト」には必ずライブハウスが組み込まれています。中でもこの「ライブミュージックバーJET」は常連客も多くアメリカ人もうちなんちゅも観光客も入りやすいので、きっと誰でも楽しめることでしょう。
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ぜひ金曜日と土曜日のライブスケジュールに合わせて、JETの力強い生演奏に心を震わせてみてはいかがでしょうか?
■スナック喫茶プリンス
ツアーの締めは1965年創業の老舗「スナック喫茶プリンス」です。
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店内には壁一面で収まるどころか天井にまでドル札が貼り巡らされています。戦地へ向かうアメリカ兵が、生きて帰って来られるようにと願いを込めてメッセージと名前を書いて貼りつけていったのが始まりと言われています。
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よく目を凝らしてみると「No worries.(心配しないで)」や「I have KIDS.(子供がいる)」と書かれたドル札があります。
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そのメッセージからは戦地から必ず帰ってくるという強い気持ちを感じました。その時の光景が目の前に浮かび上がってくるような不思議な感覚に目頭が熱くなってしまいます。
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また店内には沖縄がアメリカの統治下にあった時代、アメリカ兵を相手に食品を提供することを許されたAサインの証が飾られています。沖縄が日本に復帰した時にはアメリカ軍基準のAサインの証が無意味なものになってしまうので沖縄Aサイン連合会が結成されて受け継がれました。その当時の看板が今もなお飾られているのでぜひ探してみて下さい。
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スナック喫茶プリンスは、今でも当時の様子をありありと想像することができる貴重な場所だと感じました。そんな雰囲気があるからか様々な映画の撮影地などでも使用されているそうです。
■海ならぬ沼があるコザ
「このツアーをきっかけにコザに興味を持って欲しい。コザを舞台に作られた映画を観た後に、ツアーに参加するとさらに楽しめるよ」と、映画好きの宮島さんらしく、さらにツアー楽しむコツを教えてくれました。
今回、まちまーい(街歩き)ツアー「ディープタウンコザ・ナイト」に参加して感じたことはコザのどこを切り撮っても絵になる光景がたくさんあること。そしてその歴史を知れば知るほど魅力を感じ、一晩では物足りなくなってしまうこと。たくさんのリピーターがいるのも深く頷けます。
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きっと誰もが描く沖縄のイメージは綺麗な海でしょう。しかし、コザには海ならぬ沼があります。
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いつもの沖縄観光では物足りなくなってきた沖縄ファンのみなさん、次の沖縄観光では1度足を踏み入れたら簡単には抜け出せない魅力的な沼、いや、コザにハマってみませんか?