八重山諸島に属する西表島は、沖縄本島に次ぐ面積を誇り、島内のおよそ90%が亜熱帯の自然林で覆われています。
ユネスコ世界自然遺産に登録された西表島でアドベンチャーツアーを行っている”PUMEHANA adventures 西表島”の公式ネイチャーガイド梅沢 崇さんに案内してもらうと、 この島の圧倒的な自然そのものが壮大なエコシステムであり、最も洗練された"エシカル"なんだと思い知らされました。
■広大な湿地帯に広がるマングローブカヤック
ツアーのはじまりは、マングローブカヤックから。ゆったりとパドルを漕ぎ、河口を進んでいきます。
マングローブとは、熱帯および亜熱帯地域のみに見られる生態系で、川を流れてきた真水(淡水)と海水(塩水)が混ざり合う「汽水域」と呼ばれる場所に生える植物の総称のこと。 タコの足のような根が特徴のヤエヤマヒルギからニッパヤシまで、日本国内で生育しているマングローブ植物7種すべてが分布しているのはここ西表島だけなのです。
雄大な景色を目の前に、パドルを漕ぐ水音が広がる様子は、まるで大自然の扉をノックしているようでした。
淡水は上部を、海水は下部を流れ、河川流域から流入する有機物(栄養塩分)が集まり栄養の宝庫となっています。耳を澄ますと、マングローブを住処にしている水辺の住人たち(小鳥や虫)の鳴き声も聞こえてきました。
1時間ほど進むと、マングローブに包まれた癒しのポイントに到着。
ここでは、ゆったりと深呼吸しながら、水分補給も兼ねて参加者のみなさんからの質問や世間話を楽しみます。
■梅沢さんに“西表島でのエシカルな取り組み”について話を伺ってみました。
「実は、色々なコースがあるのですが、今回体験していただいているツアーが1番やりたかったんです。 西表島に移住して、最初は農業にチャレンジしていました。ご縁があり大浜農園で修行させてもらって地産地消や自然の営みに触れる中、大浜農園の裏山には、誰も知らない滝があることを知りました。 その滝から農園の田んぼに水を引き、作物を育てて収穫し、一部を鶏の餌にする。そして、鶏の糞は堆肥に変えて畑に戻すというサイクルがあったのです。 滝の水は、田んぼを通り栄養豊かな沢となって海に流れ、プランクトンや魚の餌にもなります。そして、海の生態系も豊かにしてくれて、まさにこれが ”循環” であり、西表島全体がエコシステム(=“エシカルそのもの”)なんですね。」
■大浜農園の新鮮野菜でアウトドアクッキングを体験(約1時間)
マングローブカヤックを満喫したあとは、アウトドアクッキング。畑で採れた新鮮な野菜や卵を調理して、そばと軟骨ソーキと合わせ、お好みで島唐辛子のコーレーグス(*1)とピパーチ(*2)を入れたら「大浜農園採れたて八重山そば」の完成!
農園で収穫した黒紫米を使ったおにぎりは、もちもちとした感触が絶品!おにぎりを包む月桃の葉も、ほんのりやさしく香ります。
晴れた空の下、美しいビーチを目の前にして食べるランチは格別です。
*1 コーレーグス・島とうがらしを泡盛に漬け込んだ沖縄県の調味料
*2 ピパーチ・八重山地方を代表とする島胡椒の調味料
■渓流トレッキングで地球の脈略を感じる(約2.5時間)
お腹を満たしたらいよいよ、西表島で唯一、梅沢さんのツアーでしか体験できないアーラの滝を目指します。
アーラの滝はアラバラ川となって大浜農園の水田の源になっています。
農園を10分くらい進むと森への入り口が見えてきます。
ここから先は足元にお気をつけて下さいねと、梅沢さんが優しく声をかけてくれました。
森の中は涼しく空気がとても穏やかで、息をする度に心が洗われるよう。
30分ほど、傾斜のある岩山を登り進めていくと、道のりは険しさを増していきます。
少しドキドキしながら、道なき道をグイグイ進む梅沢さんの後を追いかけていきました。
赤木に巻き付いた蔓が大木になり、ヒカゲヘゴが地上高くそびえる。そんな大自然の中を通り抜けていくと、タイムスリップした感覚さえ覚えます。都会じゃありえない光景が、見渡す限り広がっています。
■訪れた人々をやさしく
包み込むアーラの滝。
約1時間渓流を遡り、アーラの滝に到着。断崖絶壁から流れ落ちる川がシャワーとなって歓迎してくれました!
剥き出しの岩肌ではなく、藻類や苔類がドレスを纏うように斜面を覆い尽くしています。トレッキングに慣れた旅行者でもアーラの美しさに息をのむ方も多いそう。
■滝壺に着いたら、ゆっくり滝カフェを楽しみましょう。
滝壺に着いたら、極上の"滝CAFETIME"がはじまります。
コーヒーの香りが漂う中、滝のミストを浴びながら梅沢さんと会話を楽しんでいると、こんな話が聞けました。
■山があって、森があって、川が流れて、畑に引いて、海に戻して、
珊瑚も魚も育ち、そして、人もやさしく元気になって
地元に帰っていく。
「僕のツアーに参加してくれる方は、エコツーリズムの意識が高い方も多くいらっしゃいます。なのでツアー中は、あまりSDGsやエシカルの事を話さないようにしています。 朝から夕方まで一日かけて体験する中で、自然と本人が感じてくれて言葉にしてくれるからです。 このツアーの最終目的地の滝カフェでも、僕が喋るよりも、体験者自ら自然の大切さを口にしてくれる。そして、価値観が180%変わる方もいらっしゃいます。僕みたいに移住したりね(笑)。」
■体験したアドベンチャーツアー
09:00〜 広大な湿地帯でマングローブカヤック〜
11:30〜 大浜農園の新鮮野菜で絶品アウトドアクッキングを体験
13:00〜 西表島で地球の脈略を感じ、息をする度に心が洗われる森で渓流トレッキング
14:00〜 訪れた人々をやさしく包み込むアーラの滝を満喫
4:30〜 滝のミストを浴びながら、極上の"滝CAFETIME"
15:00〜 帰り道も西表島の大自然を満喫、おつかれさまでした
●カヤックの航行距離・時間
航行距離:約4km(往復)/ 航行時間:約2時間(往復)/ 航行水域:穏やかな川
●トレッキングの歩行距離・時間
歩行距離:約2km(往復)/ 歩行時間:約1時間(往復)/ 累積標高差(上り)
:約60m累積標高差(下り):約60m
■自分にも自然にも心地よい、
ビーチクリーンアップにも参加してみよう
西表島エコツーリズム協会・西表エコプロジェクトが定期的に開催しているビーチクリーンアップ。タイミングが合えば、地域の子供たちとのふれあいを楽しみながらこの島をもっと美しくできる活動に参加してみませんか?
エシカルな時間をつくることで、その旅はさらに豊かな良い思い出となります。
西表島はガイド免許制度が導入されています。
■2020年4月に「竹富町観光案内人条例」が施行され、
西表島の自然観光ガイドの免許制度がスタートしました。
西表島は、世界的に見ても豊かな自然環境を有しているため、これを目的に多くの観光客が訪れています。また、その観光客を案内する自然観光ガイドも島内で多数活動しています。
竹富町では、この西表島の優れた自然を守りながら、今後も継続して利用していくため、地域に根差した質の高いガイドによるツアー提供を目指しています。
■観光客のみなさまへ
「竹富町観光案内人条例」により、西表島で陸域ガイドを行う方は竹富町観光案内人免許の取得が義務付けられています。免許を取得したガイドは「救命救急」や「水難救助員」の資格など、さまざまな要件を満たしたガイドです。 西表島で「カヌー」や「トレッキング」などのツアーに参加される際は、ガイドが免許を持っているかご確認ください。
※海で行うダイビング、スノーケリング、釣りなどのガイドや、集落内の歴史ガイドなどは本免許制度の対象外です。
- 住所/〒907-1541
沖縄県八重山郡竹富町上原10−75 フルーツアイランドハイツC 1