畑と食卓を繋ぐ農家のレストラン
「笑味の店」

#北部

76歳(2024年1月現在)の金城 笑子(きんじょう えみこ)さんの1日は、朝7:00に出汁をとるための鰹節を煮ることから始まります。

■沖縄の伝統食を次世代に継承

“長寿の村”と呼ばれ、世界からも注目されている大宜味村(おおぎみそん)で、沖縄の郷土料理店「笑味(えみ)の店」を営む金城さん。村のおばぁ直伝の沖縄家庭料理や島野菜を“次世代に継ぐ”ため、日々“残したいレシピ”や“伝えたい味”を提供しています。

1990年(平成2年)にオープンをした笑味の店。当初お店を訪れるのは、ほとんどが県内に住む中高年だったそうです。「その世代にとっては思い出の味だったのでしょうね。懐かしの味を求めて来てくれる中高年が多かったです。近所のおばぁたちは食べに来ないよ。だって自分で作れるから(笑)」と金城さん。

地域に根ざした伝統食材・食文化を守りながら、それらを後世に繋いでいく「スローフード」への取り組みが世界で注目されはじめてからは、県内外・海外から訪れる人も増え、今では知る人ぞ知る名店に。県産食材を積極的に活用し、その魅力を発信する飲食店を認定する「おきなわ食材の店」第一号の登録店舗でもあります。

■笑味の店を支える自家菜園

金城さんが目指すのは「畑と食卓を繋ぐ場所であること」。

かつて村のおばぁたちが管理していた畑を譲り受け、パパイヤ、よもぎ、トマト、玉ねぎ、ニラ、レタス、ブロッコリー、ゴーヤー、パクチー、バジル、なす、二十日大根… さまざまな野菜を無農薬・無化学肥料で育ててきました。最近では、不耕起栽培(畑を耕さない方法)を試みています。

同じ野菜でも、季節によって調理法や味付けを変えているという金城さん。

「例えばゴーヤーね。夏のゴーヤーは水分が多くて柔らかいから、大きく切って、炒め過ぎないようにします。冬のゴーヤーは夏のものに比べると水分量が少なくて硬いので、炒める時の油を少し多めに。炒める時に使う油はオリーブオイル。さっぱり食べられるからね。ゴーヤーを炒めている途中で溶き卵を加えると、その余熱でゴーヤーがさらに柔らかくなって、苦みも抑えられて、おいしくなる。よくお客さんから『ここのゴーヤーは苦くないですね』って喜んでもらえますよ」

大学で栄養学を学び、栄養士としてのスキルを身につけた後「さらに知識を身につけたい」と管理栄養士の資格も取得した金城さん。伝統を大切にしながらも、食材を活かすために新しい食材や調味料も取り入れ、少しアレンジをしています。今年からはお店で糀を作り、ジャムやドレッシングに生かす研究をしています。

■大宜味村を詰め込んだ人気ランチ

こちらは、季節の野菜をその日に使う分だけ収穫し、ふんだんに使用した「まかちくみそーれランチ」。「まかちくみそーれ」は沖縄方言で「お任せください」という意味で、少しずつ盛り付けられた12種類ほどのお料理は、どれも昔ながらの味付けが楽しめます。

金城さんは、食品ロスを減らすためにお店を完全予約制にし、週4日の営業に。

さらに「残飯も無駄にできない」と、土づくりに活用します。お店で発生した残飯、米のとぎ汁、米ぬかなどに酵素を混ぜ、微生物の力で発酵させて堆肥化し、それを畑に還元する“循環型農業”を行っているのです。

「やりたいことがたくさんあって頭がチカチカする」と話す金城さんですが、最近は“次世代に伝えていきたい”という思いから、お客様とゆっくり触れ合う時間を大切にしているそうです。レシピを問われた際にはお答えして、興味のある方には畑にも案内。

戦争を生き抜き、食糧難を乗り越えた大宜味村のおばぁたちが生きていくために知恵が生かされた伝統料理を、笑味の店で味わってみませんか?

INFOMATION
笑味の店
  • 住所/沖縄県国頭郡大宜味村字大兼久61
  • 電話/0980-44-3220
  • 営業時間/11:30〜16:00(L.O.) 完全予約制(前日まで)
  • 定休日/火・水・木
  • 詳細を見る
掲載日:
2023.10.26
更新日:
2023.10.27

※掲載内容は、掲載日もしくは更新日時点での情報です。最新情報は、ご利用前に各施設などにご確認下さい。

お気に入り登録について

あなたの「お気に入りリスト」をみんなと共有しよう!

当サイトでは、情報一覧の♡アイコンや各ページに表示されている「お気に入り」ボタンをクリックすることで、あなただけの「お気に入りリスト」が作成できます。 下記「お気に入りリストを共有する」ボタンをクリックすると、SNSなどで共有できるあなたオリジナルの「お気に入りリスト」URLが発行されます。

お友達やご家族と共有したり、PCで作成したリストをスマートフォンに送ったり、旅のプランニングに是非お役立てください。

お気に入りリストはこちらから

花笠マハエ