那覇市にある商店街の一角で、ひときわ存在感を放つ1坪のアートギャラリー「PEEPAHOLIC ART GALLERY(ピーパホリックアートギャラリー)」。24時間、通る人が誰でもアート作品を楽しめる、無人のギャラリーです。
■持ち帰るまでが、海洋ゴミアート
1坪のギャラリーいっぱいに積み上がったブイと、それを引っ張るように置かれたウミガメが与える強烈なインパクトは、つい足を止めて見入ってしまいます。
この作品を制作したのは、ジュエリー&アイウェアブランド「VIVON」の代表であり、現代芸術家や華道家としても活躍するBANKIYOさん。自身の作品を展示するギャラリーとして、PEEPAHOLIC ART GALLERYの館長を務めています
以前から親交のあるアーティストさんに誘われて参加した、アートを通して海のことを考える「海からの手紙~アートで伝える展示会~」がきっかけとなり、『しょっぱい女』を制作したそうです。
ウミガメが真っ黒なブイの集まりを引いている様子と、「持ち帰るまでが海ごみアート」として、かつて海洋ゴミだったブイを1つ”¥5385(※ごみはごー)”で購入できるというユニークな手法が、見る人に強烈なインパクトを与えます。
※「はごー」とは、清潔でないことを意味する”うちなーぐち”(沖縄方言)。この価格表現には、海洋ゴミをなくすことで、海を綺麗にしたいという作者の気持ちが込められています。
ブイを購入して持ち帰ることができるだけでなく、インパクトとメッセージ性のある作品を見て、多くの人が海洋ゴミの問題を”心で持ち帰って“います。
BANKIYOさん自身も好きな海の景色があり、普段からゴミを拾うことがあるのだそう。
「みんな海でちゃんと遊んでいるのかな?って思うよ。普段から海に接していると、それぞれに大事な景色があると思うし、俺も大事にしている海がある。」大好きな自然や人、地球を良くしたいというBANKIYOさん。
アートも、沖縄の海も、力強く守ってくれるように感じさせるその姿に魅了されました。
■アートを通じて、自分を磨く。人が磨かれると、世の中も良くなる。
“覗き見中毒”という意味の造語で名付けられた通り、つい立ち止まって覗き見してしまう存在感。数ヶ月ごとに作品が変わり、見る人を常に驚かせています。
「この辺の人も初めは何してるんだろうって思ってたはずだけど、今では、もったいないから作品変えないでとか、(制作)途中は見ないでおこうとか、すごく楽しみにしてくれている。」と、地域からも愛されるアートギャラリーになっています。
「もっとみんなで話したいのに、美術館って敷居が高くてみんなを巻き込めない。」
そんな思いから生まれた、まるで無人販売のようなギャラリーは、誰でもアートを楽しんでほしいという思いが込められています。
通る人の足を止めて、つい覗き見させてしまう、PEEPAHOLIC ART GALLERY。
忙しない日常から少し立ち止まって、自分自身や大切なものをじっくりと考える”やさしい”時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?