2025年、戦後80年という大きな節目を迎えます。
多くの犠牲者を生んだ「沖縄戦」について知り、
命の尊さについて考えることは
沖縄戦の記憶を未来につないでいく大切な一歩です。
本特集では、沖縄戦の基礎知識や
語り継ぐ人のメッセージをはじめ、
映画作品や施設、
ガイドツアーなど、
さまざまな角度から沖縄戦を学ぶことができます。
観る・歩く沖縄戦
戦後から現在まで、「沖縄戦」を描いた
映画作品が数多く製作されています。
映画監督、映画研究者として活動している
平良竜次さんに
動画配信サービスで観られる
映画の中からおすすめの作品を選んでもらい、
その見どころと、実際に足を運んでほしい
関連スポットをご紹介します。
平良 竜次
たいら りゅうじ
那覇市出身。ライターやスチル撮影、沖縄映画研究、映画監督、司会など様々な分野で活動中。シネマラボ突貫小僧代表。琉球新報にて『沖縄まぼろし映画館』連載中、同名書籍も発刊、沖縄国際映画祭で沖縄関連映画を上映する企画「沖縄ヒストリカルムービー」「デジタルで甦る8ミリの沖縄」を運営。また県内現存最古だった映画館「首里劇場」(昨年末に取り壊し)の記録保存活動を行った。
短編ドキュメンタリー映画『首里劇場ノスタルヂア』『焼け跡のバレエ発表会』を監督。
プロデューサーをつとめた『一生売れない心の準備はできてるか』は全国各地で公開中。
スタッフ&キャスト
監督:今井正 脚本:水木洋子 原作:石野径一郎
撮影:中尾駿一郎 音楽:古関裕而
出演:津島恵子、香川京子、岡田英次、藤田進、他
製作:東映/1953年/130分/モノクロ
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南風原町立南風原文化センター
ひめゆりの少女たちが傷病兵の世話を行った病院壕を再現しており、傷病兵が収容された状況を追体験できます。また、町内の戦争遺跡からの出土品も多数展示しており、映画を観た後に訪れることで、さらに理解が深まります。
FAX:098-889-0529/
MAIL:H8897399@town.haebaru.okinawa.jp
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戦いの全貌を
多角的に描く意欲作
米軍の戦史に「ありったけの地獄を集めた」と形容された沖縄戦。その全貌を描いた意欲作です。防戦一方の日本軍と現地司令部の苦悩を絡めつつ、戦場に投げ出された住民たちの様々なエピソードを交えて悲惨な戦いの実相を多角的に見せてくれます。
監督はスピーディーでケレン味に富んだ作風が特徴の岡本喜八。本作でもそのテクニックが存分に発揮されており、那覇の町並みを再現したオープンセットや本物の戦車を使うなど、スケールの大きな映像を次々と実現させました。また、実際に戦場となった場所で撮影を敢行することで実際の戦いに肉薄しており、沖縄戦を体験した地元民が多数エキストラ出演したという裏話もあります。戦争の非道さと、小を捨てて大に就く国家の冷酷さを訴えた良作です。
スタッフ&キャスト
監督:岡本喜八、中野昭慶 脚本:新藤兼人
撮影:村井博 音楽:佐藤勝
出演:小林桂樹、仲代達矢、丹波哲郎、田中邦衛、他
製作:東宝/1971年/149分/カラー
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第32軍司令部壕(首里城公園無料エリア)
米軍侵攻に備えて日本陸軍が首里城の地下に張り巡らせた1000m以上にわたる地下壕群。現在はまだ公開されていないため、中に入ることはできませんが、木々に覆われた壕の入口を見ることができます。2026年の首里城正殿の復元とともに地下司令部壕についても段階的に第5坑口、第1坑口の公開をめざしています。
可能性があるので近づかないこと
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米兵の視点で描かれた
ハリウッド製
沖縄戦映画
ハリウッドスターにしてアカデミー監督賞受賞者のメル・ギブソンが手掛けた作品で、実際の出来事を基にしています。宗教上の理由から武器を持つことを拒否し、丸腰の衛生兵として従軍したデズモンド・ドス。彼は沖縄戦の中でも特に激戦地であった「ハクソー・リッジ」(のこぎり岩)に赴き、銃弾が飛び交う中で、75人もの米兵を救うのです。彼の勇気は国や人種の枠を超えて感動的であり、悲惨な戦争の中において一層、人間の尊厳が輝いて見えます。
ただ不満なのは、実際には戦闘に巻き込まれて亡くなった地元住民が多くいたはずなのに、全く登場しないこと。主人公の個人的なドラマに焦点を当てるための選択とはいえ、気になるところです。そのことも意識しながら見てほしいと思います。
スタッフ&キャスト
サム・ワーシントン、
テリーサ・パーマー、他
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前田高地(ハクソー・リッジ)
沖縄戦有数の激戦地といわれた「前田高地(ハクソー・リッジ)の戦い」が行われた場所。この戦いにおいて衛生兵デズモンドは身を挺して多くの命を救いました。本作の公開後は海外の観光客の訪問も増えています。
草むらよりハブが出る
可能性が
あるのでガイドなしの場合は
近づかないこと。
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沖縄戦、知られざるもう一つの顔
沖縄本島北部で活動した「護郷隊」と呼ばれた少年たちによるゲリラ組織。彼らの秘密戦に焦点を当てたドキュメンタリーです。沖縄戦における驚愕の実態を克明に描いています。かつての少年たちに聞き取りするうちに見えてくるのは、謎に包まれた謀略機関「陸軍中野学校」の存在。彼らは「護郷隊」のみならずマラリアが蔓延する離島への強制移住、情報漏洩を阻止するための住民虐殺などに深く関わっていました。
監督たちは、膨大な資料調査と関係者へのインタビューを通じて、これまで語られることのなかった沖縄戦の深い闇を浮き彫りにし、戦争の残酷さと人間の業を描き出します。本作から得られる歴史の教訓は、きな臭くなってきた現在だからこそ必要なのかもしれません。
スタッフ&キャスト
撮影:平田守 編集:鈴尾啓太
音楽:勝井祐二
プロデューサー:橋本佳子、木下繁貴
2018年/114分/カラー
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YouTube/Google
Playムービー
少年護郷隊(第一護郷隊)の碑
1944年、現在の名護小学校グラウンドで護郷隊の入隊式が行われました。慰霊碑はその側に建立されました。毎年6月23日の「慰霊の日」には、遺族や関係者が集まり慰霊祭が開催されています。
小学校や幼稚園があるため、
運転に注意してください。
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非体験者である若者がつなぐ、
戦争の記憶
本作は「戦争映画」ではありません。若者が経験したことのない戦争をどう語り継ぐのか思索し続ける、一種の「ロードムービー」です。手術で視力を取り戻した青年が、写真や絵画に触発され、被爆地の長崎や苛烈な地上戦が繰り広げられた沖縄を巡ります。モノクロで映し出される、かつて戦場だった風景と、そこで暮らす人々の姿。青年は戦争の傷跡を目の当たりにし、自身の生と死、そして過去と未来について深く考えます。戦争を体験していない者がどのようにその悲惨さを記録し、未来へとつないでいくのか。視覚的な芸術表現を通して心のうつろいを鮮やかに描き出しています。眞栄田郷敦演じる青年と、映像の美しさが際立った作品です。
スタッフ&キャスト
出演:眞栄田郷敦、池内博之、Awich、尚玄、
伊藤正之、加藤雅也
2022年/169分/モノクロ・カラー
動画配信サービスで視聴できます
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佐喜眞美術館
普天間基地の一部でしたが、館長が先祖伝来の土地を取り戻して建てた個人美術館です。『彼方の閃光』の主人公である眞栄田郷敦はここを訪ねて丸木位里・俊の大作『沖縄戦の図』を見つめます。
屋上のみの利用はできません。
他にも佐喜真美術館に関連する映画作品として
『丸木位里・丸木俊 沖縄戦の図 全14部』
(2023年/河邑厚徳)があります。
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当時の時代背景が生み出した
戦争のリアル
「ひめゆり学徒隊」の物語は数度にわたり映画化されてきました。その中から選ぶとすれば最も古い1953年版をお勧めします。戦争の爪痕が生々しく残る時代に作られたこともあり、スタッフやキャストの全てが戦争体験者。そのために危険に感じるほどの戦闘場面や、役者陣の荒い息遣いと表情から戦時の緊迫感が伝わってきます。また少女たちの無垢さと、その生命が容赦なく奪われる残酷さとの対比は、観る者の心に深い悲しみを残すはずです。実話を基にしつつもドラマ性を高めるために創作された部分も多く、沖縄での撮影が叶わず、本土のロケ地やスタジオで撮影されるなどの制約もあったものの、それを凌駕する戦争のリアルと平和への思いがフィルムに刻み込まれています。