■「島の色」片手にめぐる、
エコアイランド宮古島
沖縄県内でも指折りのリゾート地である宮古島。人口約5万に対し、年間約 40万人の観光客が訪れる観光都市です。環境負荷の増加や資源の島外依存が課題であることから、いつまでも住み続けられる島を目指し、2008年に「エコアイランド宮古島宣言」をしました。
そんな宮古島の先進的な取り組みを、さまざまなアプローチによって実現に向かわせているのが「離島未来ラボ」。離島未来ラボがどのような取り組みを行っているのか、宮古島の未来に何を残そうとしているのか、お話を伺いました。
■エコアイランド宮古島の未来を担う「離島未来ラボ」
2017年「エコアイランド宮古島宣言」をきっかけに、誕生した離島未来ラボ。宮古島市と連携しつつ、市民目線でエコアイランドの推進と周知を担うことを目的に生まれました。
スタート時は市民の方とともに「エコアイランド宮古島とはどうあるべきか」を議題にワークショップを繰り返し、そこで出た意見をもとに、「千年先の、未来へ。」というエコアイランド宮古島の標語を開発しました。千年先、つまり「永遠」に続く島の未来ということです。
それをきっかけに、標語を軸としてコミュニケーションを計りながら、島のエコ活動を取材し、映像や記事で発信したり、エコな活動を表彰するイベントや、企業と農家さんをつなぐワークショップの主催を行ったりと、リアルとデジタルの両方でエコアイランドとしての宮古島を市民に伝えました。
その後は、エコアイランド宮古島の広報誌「島の色」をメイン事業とし、エコアイランド宮古島の公式サイト制作や、宮古島市内で使える「理想通貨」の発行・運営を官民共創で行いました。各種プロダクト立ち上げのほか、宮古島の魅力を伝える記事制作の受注、企業誘致なども行い、さまざまな角度でエコアイランド宮古島推進に取り組んでいます。企業誘致をきっかけに農家さんの課題に触れ、畑の土壌をはかるセンサー開発の協力やワークショップを行うなど、宮古島の方々との会話からプロダクトが生まれることも。
現在、計5名のスタッフにて運営する離島未来ラボ。働いているスタッフは主婦の方も多く、農業をしながら働いているスタッフもいるのだとか。
「農業とのかけもちも、弊社の取り組みに通ずるものがあると思っています」。そう話すのは株式会社離島未来ラボ社長の大島康生さん。エコアイランド宮古島の周知を推し進めながら、地域に根付いた柔軟な雇用形態を実現しています。
■官民協働ローカルマガジン「島の色」
メイン事業であるエコアイランド宮古島の広報誌「島の色」は、宮古島市と連携して開発したものを、離島未来ラボが引き継ぎました。エコな活動や環境にかかわる情報はもちろん、暮らしや観光など「エコ」を取り巻くすべてのテーマを多角的に取り扱っています。引き継いだ後も宮古島市のエコアイランド推進課が監修し、官民協働のローカルマガジンとして不定期ながらも年3回発行。そのデザイン性やSDGsに特化した企画や記事により反響も大きく、テレビ局やメディアからの問い合わせも多いのだそうです。
大島さんは、島の色を通して「いつまでも住み続けられる島にするにはどうすればいいかを考え、伝えたい」と話します。参画する協賛企業を「エコパートナー」と呼ぶのも、伝え方にこだわった故のもの。エコに協力する企業やお店をわかりやすく呼ぶことで、観光客が「エコパートナーのお店に足を運べば、間接的にエコな活動に参加できる」と直感的にわかるようにしています。島の色は島内の空港やレンタカーオフィス、スーパーにて入手可能。観光の際にはぜひ島の色を手に取って、エコパートナーのお店に積極的に足を運んでみてはいかがでしょうか。
■島を想う気持ちのお金「理想通貨」プロジェクト
離島未来ラボは、島内にエコが循環するプロジェクトとして「理想通貨制度」の運用も担っています。理想通貨は「いいコトをしたら、ちょっといいコト。」をコンセプトに、エコ活動を行った市民・観光客に地域クーポンとして「M(ミャーク)」を配布するというもの。理想通貨はビーチクリーンなどのイベントへの参加や、SNS投稿などで入手でき、市内の加盟店で特典の提供が受けられます。
【入手方法】 https://www.city.miyakojima.lg.jp/gyosei/ecoisland/risoutuuka.html
【加盟店・特典内容】 https://shimanoiro.site/guide-category/risotuka/
加盟店は飲食店やホテル、お土産品店などさまざまですが、こだわったのは「特典は必ず循環型であること」。たとえばホテルでよくある「シーツ交換不要な方にアメニティプレゼント」などは施設内のコストカットで完結してしまうので、ホテルの前のビーチにてビーチクリーンに参加したお客様にホテルレストランで使えるクーポンを発行するなど、地域全体のエコにつながる特典であることに重きを置いています。
実はこの理想通貨、当初はエコ家電ポイント制度として実施する予定だったそう。ですが市民を集めて意見交換会を行ったところ「日々の生活でつかえるゲームのようなものがあるとうれしい」という声があがり、声をもとにブラッシュアップ。そうして完成したのが「理想通貨」なのです。市民の声から生まれた理想通貨は、導入から1年半後に実施した市民アンケートの「市民が知っているエコアイランド施策」にて「知っている」と回答した人が約30%にのぼり、公式サイトの次に多い結果となりました。
認知度の高さしかり、導入後はビーチクリーン団体やまちをきれいにする取り組みの増加もみられ、「地域の人々の意識の変化を実感している」と大島さん。近隣離島から導入の相談をうけることもあるそうで、周辺の島にもいい影響を与えています。
■「島の色」片手に、自分なりのエシカルトラベルを
島の色をはじめとした様々な取り組みを通して、「エコアイランド」としての宮古島を知ってもらいたい。知ったうえで、宮古島のゆたかな自然や環境はみんなの資産だと思ってほしい。そのために今もあらゆる活動を検討しているのだと大島さん。「市民はもちろん、観光でおとずれる方にもエコの視点で気に入ってもらえるよう、伝える力を強化したいです。そして第二の故郷として一緒に守って育ててくれるような人が増えてくれるとうれしいし、そのために頑張りたいと思っています」と話してくれました。
持続可能な島づくりは、市民だけでなく観光におとずれる人の協力も必要。理想通貨しかり「島の色」には”できること”のヒントがたくさん詰まっています。観光におとずれる際、まずは「島の色」を手に取り、旅をたのしみながらできる”自分なりのエコ”を見つけてみてはいかがでしょう。
広報誌「島の色」
- 発行/株式会社 離島未来ラボ
- 監修/宮古島市エコアイランド推進課
- 配布場所/宮古島島内のコンビニ・空港・大型ショッピングセンター・レンタカー貸出店舗・飲食店・わしたショップ各店等
- 公式サイト/https://shimanoiro.site/shimanoiro/