■伝統染織に使用されてきた
「琉球藍染め」とは?
沖縄本島北部の本部町(もとぶちょう)伊豆味(いずみ)で“琉球藍”を栽培する「藍風(あいかぜ)」では、貴重な藍を使って、藍染め体験をすることができます。
八重岳を一望するやんばるの森の中に佇む藍風。緑に囲まれ、鳥のさえずりや虫の声、風の音に包まれ、心が癒されます。
紅型や芭蕉布など、沖縄を代表する伝統染織に使われてきた琉球藍。化学染料を使って染められたものとは風合いが異なり、経年変化を感じながら使えることもあって、古くから人々を魅了し続けてきました。
■琉球藍に魅せられ藍風を
引き継いだ店主
20年ほど前に“旅人”のまま沖縄に移住をした荒木 瑞枝(あらき みずえ)さんも琉球王朝時代からの歴史を誇る琉球藍染に魅せられたひとりで、運営する工房とカフェ&ショップでその魅力を紹介し、訪れる人や次代へと繋いでいます。
「藍染って“年配の方が持っているもの”というイメージが強くて、実は私もあまり興味がなかったのですが、何かのイベントで “気軽に身につけられるもの”が藍染めされているのを見た時に“好きかもしれない”と感じたんです。安心感を与えてくれる藍の紺色が、何となく好きだなぁ…って。それをきっかけに『暮らしの中に取り入れられるようなものを、自分で染められたら楽しいだろうな』と思って、少しずつ藍の勉強を始めました。全く知らない世界だったので、ゼロからのスタートです。植物からこの色が生まれるというところに興味を惹かれました」
琉球藍染織人の城間さんご夫妻がそれまで営んできた藍風をリタイヤすることになり、譲り受けた荒木さん。琉球藍から染料の素となる泥藍(どろあい)をつくり、そこに草木染めのときに燃やした薪を利用した木灰の灰汁(あく)や泡盛、黒糖を加えた昔ながらの“天然発酵建て”の藍は、染めた時の美しさだけでなく、自然を汚さないという利点も。化学染料を使う場合、染色工程で排出される排水が環境汚染の原因となってしまいますが、有害な物質が含まれていない天然染料は環境負荷が少なく、自然に還すことができるのです。
ログハウスのような木の温もりがあふれるショップでは、琉球藍染めのTシャツやストール、アクセサリー、琉球藍を配合した石鹸などを購入することができ、工房ではストール、コットンバック、ハンカチまたは手ぬぐいの藍染体験を楽しむことができます。
■沖縄滞在中に挑戦したい
藍染体験
ハンカチor手ぬぐい藍染体験の所要時間は1時間ほど。最初に、コットン素材の白い生地の模様を付けたい部分を糸(または輪ゴム)でしっかりと絞り、染料が染み込まないようにします(絞った部分が白く残ります)。
染料は化学薬品不使用なので、素手で作業することも可能(希望者はゴム手袋を着用)。職人さんの手も、指先までしっかりと藍色に染まっていました。
糸で絞った生地は藍染液の入った藍甕に布を浸し、液が染み込むように丁寧にもみ込んでいきます。
液は甕の中で発酵を繰り返すため、微妙な温度や湿度の差でコンディションが変化し、染まり具合も日によって異なるそうです。
甕から出して空気にさらすことで酸化し、より青く変化していくので、この作業を2〜3回繰り返します。
その後、糸を解き、余分な藍染液を落とすために水で洗い、脱水をしたら完成です。
どのような模様になっているかは広げてみるまで分からないので、最後までドキドキ、ワクワク。
体験中には「藍について」や「どのように植物から藍染液を作るのか」「琉球藍の歴史」などを学こともでき、藍の知識が深まることが、体験者にとってもうれしいですね。
「琉球藍を守っていくためには『伝統文化だから途絶えさせてはいけない』と気負うのではなく、実際に使ってみて、身近に感じられるようになっていくことが良いと思っています。私が長く続けられているのは『好きだから』。最近は、自宅で藍染めに挑戦してみたいという方もいらっしゃって、希望される方には琉球藍の苗をお分けすることもあります。日常で楽しんでいただける方が増えていくことが、結果、継承に繋がるのかもしれませんね」と荒木さん。
環境にも人にもやさしい植物由来の天然藍染め。実際に使ってみると、その良さを実感される方も多いそうです。また、藍色は私たち日本人には馴染み深く、心を落ち着かせてくれる効果も期待されています。
多くの人々の心を掴んできた藍染めを、あなたも一度体験してみませんか?